Stereolab / Music For The Amorphous Body Study Center (1995)

今月のStereolabは特別です。
彼らの密かな傑作、『Music For The Amorphous Body Study Center』(1995)。自前のレーベル、Duophonic Ultra High Frequency Disksからの8枚目でして、隠しトラックを含めて全7曲のミニ・アルバムです。
記憶があやふやですが、発売から3年以上は経った頃でしょうか。色違いのジャケット・デザインのCDを今は亡きRough Trade新宿店で唐突に発見。デッドストックなのか何なのか驚きましたが、その“First Edition”なるブツを迷わず緊急入手したのです。
一方で10インチのアナログ盤を買いそびれてしまったことを今でも猛烈に後悔しています。
本盤はニューヨーク出身の彫刻家、Charles Longとの共同制作(ジャケット写真の『Bubblegum Station』が氏の作品、ポップですね)なのですがそこはStereolabです、なかったことにされがちなただの企画盤とは訳が違います。
全曲が待望の新曲にして新録、あの1990年代半ばにおけるぶっちぎりの絶好調の時期にまだこんな隠れた傑作があるなんて。現在に至る彼らの足跡を辿り直しても、はっきり言って最高峰に挙げられますよ。
絶品の『Mars Audiac Quintet』(1994)から名盤の『Emperor Tomato Ketchup』(1996)へと繋がる音像の懸け橋がまさにここにある訳です。特に1996年のシングル盤、『Cybele's Reverie』に直結しております。
得意のハンマービートが顕著であった初期の頃の単純なリフレインの積み重ねに加えて、今回はストリングスを大胆に導入。お上品で大変麗しい仕上りになっております。
実際、M1「Pop Quiz」から
何とも気色悪いモジュレーションの音色から始まり、それとは相反するダバダバなスキャットと滑らか過ぎるストリングスが交錯。
何だか瞼の裏側に桃源郷を見る想いです。
そして、さらに優美なM2「The Extension Trip」。
極上のメロディー・ラインがたゆたう中、ここでもMary Hansenのダバダバ・スキャットが宙を舞うのには思わず夢見心地へと誘われ。俗世に戻って来られなくなりそうです。
こんなことがあるんでしょうか、もうこれは奇跡ですよ、奇跡。
後半の硬派なM4「The Brush Descends The Length」と伏し目がちにチャキチャキしたM5「Melochord Seventy-Five」が醸し出す沈鬱な雰囲気はさておきまして。
直前のM3「How To Play Your Internal Organs Overnight」なんてのは不可思議なリズムと荘厳なストリングスを背景に“ナマナマナマナマナマナマナマナ~”という艶やかなスキャットが炸裂、なのです。
Stereolabの見事な一本勝ちです、参りました。
〆はこれまた異様なモジュレーションの音色から始まるM6「Space Moment」です。切れ目のない歌が無限ループのようで催眠的ですけれど、これもまたとてつもない美意識を発揮していまして溜め息ものですね。
ここでもストリングスが大活躍するのですが編曲したのは、今回はメンバーから外れているSean O'Hagan、その人です。本業のThe High LlamasよりもStereolabでの仕事ぶりの方が好きだったりしますね。
最後の最後にM2「The Extension Trip」の一部が魅惑のリプライズとして再登場。オイシイところを見事にかっさらってはプツリと切れて終わるのです。
隠しトラック以外の6曲がしっかりと『Aluminum Tunes: Switched On, Vol. 3』(1998)の冒頭に収録されているのは今さらかも知れませんが、それだけで価値ある
美。
♪「Pop Quiz」Stereolab
麗。
♪「The Extension Trip」Stereolab
♪「Pop Quiz」Stereolab
麗。
♪「The Extension Trip」Stereolab
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