My Bloody Valentine / Loveless (1991)

天下無敵の金字塔、My Bloody Valentineによる紛れもない不滅の傑作、『Loveless』(1991)が降りて参りました。
前作の『Isn't Anything』(1989)を軽々と超えるというよりも異なる方角に転んだ先のポップの極北です。
裏を返しますとKevin Shieldsによる狂気の産物でもあります。
冒頭のM1「Only Shallow」が魅せる抑制の効いたノイズ・ギターの奔流で以て、まずは打ちのめされる訳ですので。
また、インディー・レーベルとは言え一時代を築いたCreation Recordsを経営難に追い込むほどに費用と月日をかけて追求した美意識がもはや業火となって燃え盛る究極の1枚なのですから。
甘く切ないメロディーや儚い歌声に肥大したノイズ・ギターのそれでいてたおやかな音色が幾重にも複雑に重なり合い聴き手を幻惑するのは、映画音楽とも聞こえなくもないM3「Touched」や直線的にひた走るM5「When You Sleep」にも言えることでしょう。
要所でフルートが効果的にたなびくのも幽玄の美に拍車を掛けています。
ちなみに唯一の来日公演でもしっかりとフルート要員もいらして、収録曲をきっちりと再現しておりました。
本作の山場を強いて挙げるするならば。
映画『Lost in Translation』(2003)にも使われたというM8「Sometimes」が哀しい調べを奏でる一方で 、Belindaの焦点の定まらぬような危なっかしい歌が浮遊感をたっぷりと醸し出すM9「Blown A Wish」で思わず夢心地。
止めはM10「What You Want」。
切なくも甘美な旋律と単純極まりない循環コードが時空を歪ませ、最高にして最大の快感を呼び起こすという奇跡の1曲です。
感動的なその美しさに心の涙腺は既に決壊しております。
世紀の大傑作と呼ぶに相応しい本作にも落ち度があるにはあります。
いちばん最後に置かれたM11「Soon」がどうしたって浮いてしまっています。魅惑のダンサー、やはりこれは『Glider』(1990)収録のままで完結させておくのが得策でしょう。
断固、蛇足であると敢えて申し上げます。
最後の最後に延々と続く、いえ続いて欲しいM10「What You Want」の終奏が絶え間ないさざ波となって胸の内を静かに巡るというところであのM11「Soon」なのですから。絶好の雰囲気がぶち壊しという訳なのです。
決して完全無欠とまではならなかったMy Bloody Valentineの2枚目のアルバム、『Loveless』は限りなく完璧に近い永遠の2枚目にして最後のアルバムです。
怒濤のノイズ・ギターに思い切り浸ることが出来ます。
♪「Only Shallow」My Bloody Valentine
♪「Only Shallow」My Bloody Valentine
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