My Bloody Valentine / Isn't Anything (1988)

今回もMy Bloody Valentineを取り上げてみます。
Creation Recordsへ移籍後、初のそして満を持してのアルバム『Isn't Anything』(1988)です。
いちばん最初に聴いたMy Bloody Valentineでもありました。
聴き手を突き放すようなM1「Soft As Snow (But Warm Inside)」から始まりまして面喰いました。
何とも意味深な表題ですけれども、どうにもこうにも違和感を覚えてしまいつまずいたのも束の間、M2「Lose My Breath」がこれまた底なし沼にでも引きずり込んで行くかのような吸引力を発揮する異様さが際立つのです。
俯きながら疾走するM4「(When You Wake) You're Still In A Dream」を除きまして、A面に当たる前半はこのようなぎこちない調子が続きます。
ささくれ立ったリズムを強いられて、もう全然盛り上がらせてはくれません。
これはこれで何かしら新しいことを演ろうとしていることが判る気がしますけれども。
所謂、これがBrian Enoをして“ポップ・ミュージックの新しい基準”と言わしめたというやつでしょうか。
凄まじく過激なM7「Feed Me With Your Kiss」と“Suicide”としか聞こえないM8「Sueisfine」から一転、にわかに景色が変わって行くのを肌で感じます。
後半のここから先、身の毛のよだつような狂気と同時にジャケット写真のような白昼夢に包まれるような感覚を覚えてしまいます。
M9「Several Girls Galore」なんてのは悪夢そのものです。
絶妙に混ざり合った音塊がまるで鞭のようにしなって猛威を振るう、ようにしか聞こえません。
ギターの狂暴なフィードバック・ノイズが轟く中をさながら砂糖菓子のように甘い旋律が虚ろに歌われる『Isn't Anything』。
これもまたポップ・ミュージックの極北と言えそうです。
スポンサーサイト