Agustin Pereyra Lucena / Agustin Pereyra Lucena (1970)

さてとAgustin Pereyra Lucenaの同名アルバム、『Agustin Pereyra Lucena』(1970)を旧ブログから転載してお茶を濁してみます。
アルゼンチン出身のギタリスト、Agustin Pereyra Lucenaのデビュー・アルバムをお送りしましょう。
アルゼンチンと言えば条件反射でタンゴを連想するしかないのが関の山なのですけれど、このAgustin Pereyra Lucenaの場合にはさにあらず。れっきとしたアルゼンチン・ボッサです。
そもそもの始まりは少年時代に兄からブラジル旅行の土産としてもらったBaden Powellのレコードだったそうです。それをきっかけにすっかりブラジル音楽に魅了されてしまったということです。
実際に本作にはBaden Powellの作品をカヴァーした楽曲が4曲も収録されています。
ただ、そこから“アルゼンチンのBaden Powell”と呼ばれるギタリストまでになるのは本人による弛まぬ努力の結果なのか、はたまた天賦の才なのか知る由もないのではありますが本作が格好の判断材料なのかも知れません。
肝心のその腕前はと言えば、宙を駆けるが如く1本1本の弦を力強く弾き飛ばす大胆さの一方で繊細かつ優雅に紡がれるギターの音色の心地良さと来たら何ものにも代え難いという訳です。
稚拙ではあるものの女性によるスキャットが入るM2「Tristeza De Nos Dois」、M4「Tema Para Martin」やM7「Pro Forma」とM9「Nina No Divagues」にはその美しさに思わず骨抜きにされてしまいます。
それ以上にいちばん強烈な印象を与えてくれるのがM6「Canto De Ossanha」です。目の覚めるような鮮やかさ、これに尽きます。
少々、毛色が変わってはいるアルゼンチン・ボッサな訳ですけれども素敵な音楽には変わりありませんよね。