The Jesus And Mary Chain / Psychocandy (1985)

映画、『Upside Down -The Creation Records Story-』(2010)の中でも出ずっぱりであったThe Jesus And Mary Chain。たった1枚のシングル、『Upside Down』(1984)がAlan McGeeの人生を変えCreation Recordsの礎となり、ポップ・ミュージック界へ多大な影響を及ぼした訳です。
今回は『Psychocandy』(1985)を旧ブログから転載いたしてお茶を濁します。
何やら意味深なグループ名が印象的なThe Jesus And Mary Chain、兄弟喧嘩が解散にまで発展してしまったというグループです。
どれも1985年にCreation RecordsBlanco y Negro Recordsから発売されたシングル曲のM8「Never Understand」やM12「You Trip Me Up」、M1「Just Like Honey」を含む最初のアルバムがこの『Psychocandy』(1985)です。
今から約20年前、CDがロング・ボックス仕様で販売されていた時分に手に入れた訳なのですが、とてもそんなに長い時間が経ってしまったとは思えないほどに新鮮な気持ちで接することが出来ます。
甘く感傷的な旋律とそれに楯つくように耳をつんざくギターのフィードバック・ノイズ。
地の底を這いずり回るかのような低い歌声。
単純極まりないベース・ラインなどお構いなしにズンドコと打ち鳴らされるより一層単調なドラムス。
現在でも珍しくカリスマ性を誇るPrimal ScreamのBobby Girespyがドラマーとして参加しています。
1曲にだけドラム・マシンを使用したとのことですから、残りはすべて彼がスタンディング・ドラムを叩いていることになります。
ひとつひとつの要素は分かり易いのですが、それらが絶妙の混ざり具合を発揮するという完璧な方程式から弾き出される最上級のポップ・ミュージックが輪をかけて官能的かつ暴力的に仕上げられるという稀な例です。
プロモーション・フィルムも合わせて収録されたDual Disc版『Psychocandy』を入手してみました。このDual Discというのは1枚のディスクの両面が鏡面となっていまして、さらには歌詞まで収録されています。
Rhino Recordsからの発売ということで、CDサイドの本編の全14曲については例によってDan HarshとBill Inglotがマスタリングを手掛けています。
この手の作品に限って言えば、“効果は未知数”というかさほどその意義を見出せないのではないかと感じます。
1986年発売のシングル曲「Some Candy Talking」が無理やりに捻じ込まれたCDでは違和感を強く覚えますが、今回のこのリマスター盤では勿論、アルバムの流れを損なうことがありません。
プロモーション・フィルムについてはシングル曲のM1「Just Like Honey」とM8「Never Understand」、M12「You Trip Me Up」の3つがDVDサイドに収められています。
実質的にレコード・デビュー直後の彼らのことですから皆、若いというより幼さの方が目立ちます。
「Never Understand」でのふてぶてしいまでの格好良さとは真逆なのが海辺で寛ぐ姿を捉えた「You Trip Me Up」です。海辺に黒づくめというのはどう見ても不釣り合いこのうえない画面です。
実際のところ、デビュー・シングルの『Upside Down』を発売したきりでCreation Recordsを離れ、最後のアルバムになってしまった『Munki』(1998)で出戻って来たという数奇さ。Alan McGeeとの絆がどれほどのものなのか計りかねるところではありますが、件の映画に限らずその存在自体の大きさには未だに途方もないものがありますよね。
♪「In A Hole」The Jesus And Mary Chain
♪「Taste Of Cindy」The Jesus And Mary Chain
♪「You Trip Me Up」The Jesus And Mary Chain