Turing Machine
まったく無関係ではありますが、唐突に外付けHDDを故障させてしまった衝撃に打ちひしがれています。またもやバックアップをとっていなかった自責の念にも駆られています。
こんな辺境ブログの更新にも影響を及ぼすこともあり得る訳ですので悪しからずなんです。
ぱんややーん〜!
ルイジアナ・ブルースの旗手、Slim Harpoの活動をざっくりと俯瞰することが出来る編集盤です。
1950年代後半から活躍する彼の楽曲の数々が、ロック・バンドを組み始めたばかりのイギリスの若者たちに大きな影響を与えることとなりました。
実際にThe KinksとThe Yardbirdsが彼のデビュー曲、M2「Got Love If You Want It」を、The Rolling StonesはそのB面曲のM3「I'm A King Bee」をそれぞれカヴァーしたほどです。
緩やかさを通り越し、弛緩し切ったそのひなびた枯れ具合が独特な味わいを醸し出し、1961年にはその路線の極致とも言えるM9「Rainin' In My Heart」をヒットさせています。
1964年にはM10「Still Rainin' In My Heart」という表題で唐突に再録音までして、さらに回転数を落したかのような緩さ加減を披露しています。
軽妙な歌い口とハーモニカと共に臭い立つようなスワンプ臭も彼の大きな特徴なのですが、1960年代後半ともなると時代の要請のためか、しこたまファンキーなM6「Tee-Ni-Nee-Ni-Nu」で懐の深さを示しています。
カナダのライブラリー・ミュージック専門のレーベルに埋もれていたという余りにも不遇な運命を辿ったのがこの『Stop, Look & Listen』です。
ホーン隊を従えたバックトラックもきちんと作り込まれ、様々なパーカッションが踊り、優雅な女性ヴォーカリストが彩りを添えます。
賑やかでいて極めて洗練されたMBPの数々を含みつつ、その魅力さえ超えて普遍的な輝きをも放っている訳です。
それもこれもMario Castro-Neves自身が手掛けた作曲、編曲そして咲き乱れるエレクトリック・ピアノの音色があってこそでしょう。
Sergio Mendes & Brazil '66に比肩しうる仕上がりと言えるのではないでしょうか。
Mario Castro-Nevesの自作曲の出来も勿論、秀逸なのですが全10曲中、4曲のカヴァーにおける解釈も際立ったものがあります。
Carpentersのヒット曲として有名な、胸躍るM4「All You Get From Love Is A Lovesong」や蕩けてしまいそうなM7「Summersoft」Stevie Wonderなどは白眉です。
解説によるとカナダに渡ったMario Castro-Nevesが1975年に録音を済ませ、CTI Recordsからの発売を控えていたところその話が流れてしまったそうです。
そのままお蔵入りとなるも、1977年に僅かに作られた見本盤を元にCelesteがCD化を果たしたという代物です。
この手の音源の発掘には目を見張るものがあるCelesteには頭が上がらないほど素晴らしい内容の1枚です。
映画『黒いオルフェ』の挿入歌として有名な「カーニヴァルの朝」と「オルフェのサンバ」の作者であるLuiz Bonfaと当時の奥方であったMaria Toledoとのデュオ作、『Braziliana』(1965)を聴いてみました。
本日の清々しい天候に気を良くして、何かボサ・ノヴァでもということから引っ張り出してみました。
夫妻の名義でのアメリカ録音であると同時に全曲彼らの手による1枚でもあります。
『黒いオルフェ』云々という枕詞も不要なのかも知れませんが、そのM3「Samba De Orfeu」が本作にも収録されています。
と言いつつも未だ体系的なことには明るくないのでして、ボサ・ノヴァの系譜にあってこのLuiz BonfaがGarotoとJoão Gilbertoとの中間に位置するギタリストであることを解説を読んで初めて知ることとなりました。
この超絶技巧のギタリストのボサ・ギターを存分に堪能することが出来る訳でして、さざ波のように細やかなギターの調べに思わず聞き惚れてしまうばかりです。
それに加えて、Maria Toledoの清楚な歌声やスキャットが色とりどりに舞い上がっては消え行く様子に今度はうっとりするばかりです。
楽曲によってはストリングスやピアノ、ドラムスなどが入りますが、それでも最小限の音数でありまして簡素の極みと言えます。
これぞ生粋のボサ・ノヴァといった塩梅です。
そのストリングスの滑らかさと相俟って、ふたりの仲睦まじさがこちらにも伝わって来ます。