フード・ブレイン / 晩餐 (1970)

フード・ブレインの『晩餐』(1970)です。
先日の水谷公生による『A Path Through Haze』(1971)と同様に旧ブログからの転載です。
フード・ブレインの『晩餐』(1970)、象のジャケット写真が目印です。
わざわざ疲れた身体に鞭打って聴いてみた甲斐がありました。
1998年発売の“ニューロックの夜明け”というシリーズの第7弾、“ニューロックの真髄”をまんまと垣間見ることが出来ますよ。
復刻監修のひとりは曽我部恵一です。同じ年の生まれなのに、まったく異なる音楽道を歩んでおられるますね。(←当たり前です)
ギタリストは陳信輝、鍵盤担当が柳田ヒロ、ベーシストはルイズルイス加部こと加部正義、ドラマーは角田ヒロ(つのだ☆ひろ)というまったく以て豪華な顔触れです。
これで悪い訳がないとしか言いようがございません。
M1「That Will Do」は疾風のごとき飛ばしまくる、ブギを変体させた1曲目です。
下りのエスカレーターを駆け上がるかのような勢い(←・・・大したことではないですね)で迫り来る気持ち良さ。
例えばM3「Waltz For M.P.B」で言えば、The DoorsのRay Manzarekからの影響でオルガンへと転向したという柳田ヒロの演奏が前面に押し出されました、やはりThe Doorsの面影を偲ばせるサイケデリアに心を揺さぶられてしまいますね。
アルバム全編、歌の入らないインストゥルメンタル曲にあって加部正義の演奏が否が応にも鼓膜にこびり付いて来るのです。
希有な閃きを魅せる陳信輝によるギターや柳田ヒロが奏でる奔放な七色のオルガンに一歩も引けを取らないリード・ベースぶりが凄まじいですね。
果たして、角田ヒロががっちりと支える屋台骨を一足飛びにすり抜けて行き、縦横無尽に駆け巡る訳ですよ。
痺れます。
そんな中でM8「The Hole In A Sausage」ではひしゃげたクラリネットの音も飛び出すという15分にも渡る相当、錯綜したインプロヴィゼイションをたっぷりと堪能することが出来ますし。
プログレッシヴ・ロック、サイケデリック・ロック、ブルース・ロック云々を超越したところで鳴らされるイカしたロック・ミュージックであると。ただそれだけでよろしいのではないかと感じています。
以前に採り上げました水谷公生の『A Path Through Haze』(1971)をじっくりと聴いた際と同様、1970年代初めの日本のロックがいかに先進的であったかの証左でもあります。
いえ、正味の話、是非とも耳を傾けていただきたい日本のロックです。
40年も前からこんなに刺激的で可能性に満ち溢れた音が鳴らされていたことに驚きです。ずばり言ってしまえばこれぞロック・ミュージック、天晴れ過ぎます。