Ride / Nowhere (1990)

Rideのデビュー・アルバム、『Nowhere』(1990)です。
旧ブログからの転載ではありますが、3年半も前になるエントリの『Fall EP』(1990)の続きでもあります。
二十歳の頃にいちばん入れ込んでいましたRideのファースト・アルバム、“Now Here”とも受け取ることの出来る『Nowhere』(1990)です。
先行して発売されました『Fall EP』(1990)の勢いが活かされた待望のアルバム、通称“波ライド”です。
もともとのアナログ盤にはM8「Vapour Trail」までの全8曲が収録されていますので、ここではそれに倣います。
ジャケット表面のやや上部にグループ名がエンボス加工によって浮き上がっております。
重く沈鬱な空気が立ち籠めるように始まるM1「Seagull」で本作は幕を開けるのですけれど、これがまた終盤には獰猛な獣のように聴き手に襲って来る激しさを持った1曲です。
ベース・ラインは「Taxman」The Beatlesからの引用です。
思うに、上昇気流に乗ってどこまでも舞い上がるかのようなM4「Polar Bear」の方がアルバムの冒頭を飾るのに相応しいのではないでしょうか。
それはともかくとして、儚く物憂げなM3「In A Different Place」やM7「Paralysed」やら弦を絡ませつつも素直にポップなM8「Vapour Trail」が折り込まれていますので、アルバムとして聞き易い気配りが為されております。
翻って件の『Fall EP』にも収録されていますM5「Dreams Burn Down」では、甘美な旋律とそれに相反する轟音ギターの大洪水が奔流するという意識が飛んでしまいそうな景色が広がっています。
まさに夢見心地です。
全体的に尻がむず痒くなるような青臭さが漂うのは当然のこととして、相も変わらず歌い手の線は細く、過剰なフィードバック・ノイズがさらにそれを掻き消すという最初期の路線をほぼ踏襲しています。
それでも轟音ギターでごり押しするようなこともなく、比較的に抑制されている場面もしっかりとある訳です。
我が青春の1枚。これがあればどんぶり飯何杯でもいけます。
本作の20周年記念版も発売されて懐かしい気持ちに耽るかと思いきや、蒼いのに甘美なRide の音は色褪せることをまだまだ知らないようです。