Yaba Daba Doo!
連想してしまうのはその番組自体よりも「ほのぼのレイク」のCMなんですよね。
ぱんややーん〜!
ポスト・パンクと言われても判然としないのですけれど。
そんなことはともかく、Young Marble Giantsの『Colossal Youth』(1980)の拡大版があのDomino Recordsから発売されるとか発売されただかを知りまして、手持ちのCrépuscule盤CDを引っ張り出して来ました。
先にWeekendを聴いていたこともありましたし、完全に後追いですのでパンクに匹敵するような衝撃だの何だのは身に染みませんでした。
情けないことに購入代金がやけに高かったことを憶えている程度でしたね。
それでも、インストゥルメンタル曲のみで構成された『Testcard EP』(1981)と最終シングルの『Final Day』(1981)にほか1曲が追加されていますので、納得の質量ですけれども。
さらに強いて言えば、聴き始めた当時は綺麗な女性ヴォーカルにうっとりするのが精一杯でした。
今回、改めてじっくり聴いてみますと様々なことに気付かされますね。その斬新な音の組み立てにただひたすら驚いてしまいました。
組み立てと言ってもあまりにも簡素過ぎまして、色気も何もあったものではありません。風通しが良いどころではなく骨と皮しか残っておりませんし。
然るべき音のみが然るべき場所に配置され役割を果たすという極小値は、一聴して無機質のようにも感じられるのかも知れませんが、実に生々しく記録されています。
鳴らされているのはベース・ギターとオルガンとリズム・ボックスとギター、そして歌です。
チャカポコしたリズムの連なりを角張ったベース・ラインが突き破り、薄っぺらいオルガンの音色が波打つそばで淡白なギターが思い出したように引っ掻き回す。
それらはぎこちなく上滑りを起こして、最後のお楽しみにとひた隠しにしていたかさぶたをあっさりと剥ぎ取って行くかのようです。
そんな楽器たちにたったひとりで対峙するのがAlison Stattonという乙女。
鼻歌とも言えなくもないにもかかわらず、胸ぐらを掴んで離してくれません。
Duglas T. Stewart率いるBMX Banditsのデビュー・シングルを採り上げてみます。
この12インチ・シングルを手に入れたのは割と最近のことです。中古盤、しかもシングル盤に対して大枚を叩くなんてことはとても考えられなかったのですが、30代にもなると思い切りがよくなってしまい散財の引き金となってしまっています。
7インチ・シングルの場合にはA面収録のM1「Sad?」とM2「E102」のみが、それぞれ両A面扱いだそうです。
1985年、Duglas T. Stewartは前身グループのPretty Flowersの一員だったSean Dicksonと引き続き組み、共に詞曲を手掛け始めます。後にそのSean Dicksonと一緒にThe Soup Dragonsを結成するJim McCullochが加わることからBMX Banditsが形作られたようです。
同じ頃に53rd & 3rd Recordsを興したStephen Pastelから早々とシングル制作の話を持ちかけられたそうです。
件のM1「Sad?」とM2「E102」にしてもやはり初期The Soup Dragonsに通じるものがあります。しかも楽しさとポップさが弾け、いかにもBMX Banditsらしいという独自性を既に確固たるものにしています。
M1「Sad?」については次の12インチ・シングル『The Day Before Tomorrow』に収録された再録音ヴァージョン「Sad!」を先に聴いていましたから、若干の違和感を持ちつつもこれはこれで牧歌的な弾け具合が微笑ましく感じられます。
M2「E102」についてもライヴ盤『Totally Groovy Love Experience』(1989)での大雑把なテイクを先に聴いていましたので、カズーが吹き鳴らされるこちらの可愛らしさもまた、いとおかし。
B面の初っ端のM3「The Cat From Outer Space」は、同じくPretty Flowersの一員だったNorman Blakeとの共作曲です。Pretty Flowers時代の演目なのかも知れません。
後にThe Boy HairdressersとTeenage Fanclubを結成するNorman Blakeは終盤で不穏に轟くリコーダーを担当しています。
M4「Strawberry Sunday」とM5「Groovy Good Luck Friend」は共に同じ1986年7月のステージからのライヴ音源です。演奏の下手さ加減は百も承知でしたが、見事に想像を上回るヘロヘロな出来です。
特にM4「Strawberry Sunday」の場合、1番のひら歌の段階でドラム・マシンが叩き出す貧相なビートが狂い始め中断の憂き目に遭い、やり直しているほどです。
最初はその様子をそのまま収録していることに驚きましたが、Duglas T. Stewartの変わらぬ人懐っこいパフォーマンスで以てその場を取り繕う頑張りをも含めて最も彼らしいひとコマとも言えるでしょう。
これらのライヴ音源について、かのNorman Blakeがドラマーとしてクレジットされていますが、両曲とも生ドラムが入る余地がありません。後にThe Groovy Little NumbersとSuperstarを結成するJoe McAlindenと共にコーラスを担当していることには納得出来るものの、この点については疑問の残るところです。
10年後のシングル『We're Gonna Shake You Down』(1996)の表題曲M1「We're Gonna Shake You Down」で以て取りも直さずこうしたパーティー・バンドの頃へと原点回帰を宣言するも、今ではそれから更に10年も経ってしまった訳ですから何とも感慨深いものです。
今回は久し振りにDaniel Johnstonについてご紹介いたします。何かと語られることの多い(気がします)『Speeding Motorcycle』(1990)です。
SOL Recordsというワン・ショット契約のレーベルから発売された7インチ・シングルです。
このM1「Speeding Motorcycle」は、Yo La Tengoの簡潔な演奏に合わせてDaniel Johnstonが電話越しに歌を吹き込んだという伝説とも奇跡とも言えるセッションの賜物です。
心なしか、いえ明らかに興奮しつつもYo La Tengoとの共演を楽しんでいる様子が伝わって来ますよ。
そのYo La TengoやThe Pastelsなどがカヴァーしているお陰で随分と有名になっていますので、彼の代表曲と呼んでも差し支えないでしょう。
もともとのM1「Speeding Motorcycle」自体は『Yip / Jump Music』(1989)に収録されています。
B面のM2「Do You Really Love Me」は観客の声援なども生々しく紛れ込んでいるライヴ音源でして、ギターの弾き語りです。
BMX Banditsが『Star Wars』(1992)の中でカヴァーし、現在でもライヴの場で演奏しているという名曲です。
肝心のDaniel Johnstonによる弾き語りについてはテンポがずれて行きピッチは合っておらず、歌声も酷い有り様です。
これを聞いて怒り出す方が居ても不思議ではありません。
ですけれど。
そんな彼の歌と演奏に観客たちは沸きに沸いています。
それがなぜかと言えば答えは随分と簡単なのです。
Daniel Johnston自身が作り上げた大切な歌を歌い出すその姿。
止むに止まれずに吐き出される心のひだが言葉として発せられています。
そして、感情の赴くままに紡ぎ出されるメロディー。
それが幸運なことに非常に親しみ易く、一切の無駄がない美しいメロディーなのです。
たったそれだけのことが観客を、聴き手を熱狂させるのです。
Daniel Johnstonほど音楽に対して真摯に向き合っているミュージシャンは居ないのではないでしょうか。