Teenage Fanclub / Songs From Northern Britain (1997)

今月のTeenage Fanclubは『Songs From Northern Britain』(1997)です。表題からして随分と誇らしげですね。自信のほどが窺えます。
手持ちのCDはデジパック仕様、カタログ番号はCRECD 196L。一応、限定盤ですね。ジャケット写真も素晴らしいんですが、デジパックだけに通常とは少し異なる装丁の凝りようです。
この『Songs From Northern Britain』はTeenage Fanclubにとって6枚目のアルバムでして、この辺りがグループとしての絶頂期だと思います。前身グループのThe Boy Hairdressersの結成から10年くらいでしょうか。
Brendan O'Hareが首になる前は素人臭かったことを否めませんでしたが、ここまで来ますと貫禄すら漂っていますよね。
驚いたのはこれまでとは音像の広がりや深みが段違いなことなんですよ。
発売当時、会計を済ませた直後に我慢することが出来ずに試聴した際です。冒頭のM1「Start Again」からM2「Ain't That Enough」へと切れ目なく続いたところで不覚にも涙がこぼれ落ちそうになったんです。あまりにも美しくて。
かっちりと作り込まれた前作の『Grand Prix』(1995)もギターポップとして素晴らしいんですが、本作の場合は何だかロック・ミュージックとしての完成度が高いんですよね。とても自然な音の響きが奏功していますよ。Paul Quinnによるドラミングもしっかりとしていますしね。
それから、いつもは不安にさせられるRaymond McGinleyの持ち歌もここでは骨太で筋肉質な演奏に支えられているせいか、Norman Blake作品とGerald Love作品に完全に拮抗しているんですから。これこそ重要です、それだけでも凄く大きな収穫なんです。
収録曲はどれもこれもポップソングとして粒揃いですし、感情が込められた歌や厚く美しいコーラスといったところもいつも以上に際立っています。シングル曲でもあるM1「Start Again」にどれくらい特別な意味があるのか判りませんが円熟味とは言わせない爽快さも備わりつつ、しなやかな演奏力によって器の大きさを見せつけられるような感覚も覚えてしまいますね。
もうひとつ、本作ではNeil Youngの影は薄くてですね、それでもウェストコースト・ロック風味と地元のスコットランドの香りが上手く混ざったような風合いなのが特徴なんですよ。M4「I Don't Want Control Of You」なんかが顕著かも知れません。
これもまた新境地、といったところでしょうか。
時の試練に耐え得る楽曲と音楽性。ある意味、ひとつの到達点と言えるのはあながち間違っていないですよね。ずばり、傑作です。
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