The Byrds / The Notorious Byrd Brothers (1968)

いよいよ『The Notorious Byrd Brothers』(1968)、The Byrdsの5枚目のアルバムです。
『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』(1967)からの影響が顕著だと言われていますよね。それからGary Usher制作というところが肝でしょうか。
冒頭のM1「Artificial Energy」から何だか違和感の霧に包まれたかのような気持ちにさせられるんですよ。高らかに鳴らされるホーンに彩られているのはアルバムの幕開けにはぴったりなのかも知れませんが、これがThe Byrdsなのかと若干の拍子抜けなんです。
それでも、この時節柄だからということもあるんでしょうね、きっと。そして、アルバムのジャケット写真にも載っているRoger McGuinnとChris Hillman、Michael Clarkeの共作です。
次のM2「Goin' Back」がいろいろと問題作だと言われていますよね。
Goffin & King作のカヴァーということでそれを良しとしなかったDavid Crosbyがごねまして、尚かつ自作のM14「Triad」の収録を見送られたことでグループからの脱退となったという。
現行版CDに追加されたM15「Goin' Back (Version One)」ともども、M2「Goin' Back」はとても良く出来ていますのでとてもThe Byrdsらしいのですけれども、そんなカヴァーなんて演っている場合ではないという風にDavid Crosbyには許せないものがあったのでしょうか。
そして、隠しトラックにはそんな「Goin' Back」を使ったGary Usher出演のラジオ・コマーシャルが収められていますね。当時の『The Notorious Byrd Brothers』の売り出し方が垣間見える訳ですよね。
M4「Draft Morning」はサイケデリック色の強い1曲ですね。寄せては返すベース・ラインにきめ細かいギターの音色が気持ち良いうえに、さまざまな音のコラージュが雰囲気たっぷりです。
思い切って言ってしまいますと何とも中途半端な印象しか残らない本作の中ではまともな方だと思わせてくれるんです。当然、M16「Draft Morning (Alternate End)」も合わせまして、いみじくもRoger McGuinnとDavid Crosby、Chris Hillmanの3人の共作曲なんですね。
M5「Wasn't Born To Follow」、これはもうカントリーに片足を突っ込んでいますけれども、ジェットマシンの効果音を絡ませたりと一筋縄ではいかない仕掛けです。
続きましてM6「Get To You」、こちらもカントリー然とした1曲なのですが、これもある意味、問題作のひとつでしょう。
実は初期の中心人物であったGene Clarkが一時的に復帰、このM6「Get To You」をRoger McGuinnと共作して歌っているらしい、というのですから。本作の煮え切らない中途半端さの表れでしょうか、グループ内のいざこざが元鞘まで引き起こすという複雑さですよ。
中盤のカントリー調からサイケデリックな終盤に落ち着いて行きます。
M9「Tribal Gathering」M10「Dolphin's Smile」M11「Space Odyssey」の中でも最後のM11「Space Odyssey」はいかにも意味ありげな曲名ですが、その良さがさっぱり判りません。こうやって何が何だかいったい全体訳が判らないままで終わってしまうんですよ。
サーフィン/ホットロッド期の立役者でもあったGary Usher制作というふれこみも手伝いまして、トータル・アルバムとしても何かと名盤扱いされる本作、『The Notorious Byrd Brothers』ですけれども。アルバムとしての尺は短いは曲調はまちまちだはでちっとも腑に落ちませんよ。
David CrosbyのM14「Triad」が追加収録されていなければ何度も聴こうという気にはなれないのが本音です。
不憫なことにそのM14「Triad」をボツにされたのでJefferson Airplaneに提供して『Crown Of Creation』(1968)に収録してもらっている訳ですよ。もう、そんな名曲だとしか思えないM14「Triad」の持つ美しさ、神秘性と言ったらないですね。絶対にこのThe Byrds版の方が出来が良いですし、最高なのにですよ。
同じDavid Crosby作の「Everybody's Been Burned」と並ぶ大名曲です(前回の『Younger Than Yesterday』(1967)収録)。
ついでに実験的というかお遊びというか、この時代ならではのM12「Universal Mind Decoder」も本編と違って面白いですね。
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