Heavenly / The Decline And Fall Of Heavenly (1994)

みんな大好きHeavenly!の今月のHeavenlyは黒猫のジャケット写真が人気の3枚目のアルバム、『The Decline And Fall Of Heavenly』(1994)です。
相変わらずシングル曲の入っていないたったの8曲入りですけれど、国内盤CDには嬉しいことに『Atta Girl』(1993)も『P.U.N.K. Girl』(1993)も全部、追加収録されています。
引き続き、ここに来てグッとロック・ミュージックらしい体裁の音を鳴らしています。言わせてもらうと、こんなはずじゃないのになといったところでしょうか。
どうしようもないことですけれど、理想として想い描いていた淡い何かが泡となって消えて行ってしまったような感じです。寂しいものですね。
とか何とか言っておりますが、演っていることは確実に違うステージに引き上げられています。前進している訳です。
例えば、M5「Sacramento」というインストゥルメンタル曲などに見られるように彼らなりに新しいことにも取り組んでいるのです。
詩の内容もただ辛らつなだけでなく、ユーモア感覚というかちょっとしたおかしみがちらほらしていますしね。
前作の『Le Jardin De Heavenly』(1992)から参加のCathy Rogersがしっかりと絡んで来ていまして、単なるバック・ヴォーカル以上の働きぶりです。最初のM1「Me And My Madness」からして楽しさいっぱいではありませんか。
ポップなメロディーがかっちりとした厚みのある音作りによってより一層、引き立てられていますし、Amelia Fletcherの歌自体がとても上手くなっています。
周りのインディーと比べましても、この辺は頭ひとつ抜けていると言えます。
本作の充実ぶりというのは本国はもとより遠く離れた日本での人気もそれなりということで、ある程度以上のことを好きなように実現させることが出来る時期だったからこそかも知れませんね。それだけ自信に満ち溢れているような印象なのです。
そこには随分と大人になってしまった5人の若者がいると。
『Atta Girl』と『P.U.N.K. Girl』という2枚のシングル盤を経て何かを振り切った感があって、それはもう必要のないものなのでしょうね、きっと。新しいことを試してみたい、やりたいようにやってみたいという気概が多分に感じられるんです。
今までとは異なる楽しさ、音楽を演っていてこんなに楽しいというのが自然と湧き上がっているような感じです。
最後のM8「She And Me」を聴くたびに切ない気持ちで胸が詰まりそうになります。何でしょうね、この寂寥感は。
Heavenlyと過ごした嬉し恥ずかし1990年代前半も随分と遠いもんになってしまいましたよ。
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