BMX Bandits / Star Wars (1991)

今月のBMX Banditsです。
今回もグラスゴー青年団が勢揃い。2枚目のアルバム、『Star Wars』(1991)の登場です。
『C86』(1990)に引き続いて発売された待望のフル・アルバムという訳ですけれど。この時点でVinyl Japanが手を差し伸べなくとものらりくらりとやって行くのでしょうし、こういう連中にこそレコードを出し続けてもらいたいですね。
Alan McGeeと同郷とは言え、本作があったからこそ次作以降のCreation Records期に繋がったのだろうと思います。
1960年代前半のガールポップの香りを漂わせつつ面白おかしい53rd & 3rd Records時代や『C86』と凄腕のグラスゴー人脈によって作り上げられたまろやかなギターポップとが見事に結実した傑作アルバム、『Life Goes On』(1993)の間に挟まれて何となく軽くあしらっていたこの『Star Wars』も負けず劣らず素晴らしい内容ではないですか。
The Beach Boysを意識したようなコーラス・ワークとほろ苦くも甘いメロディー・ラインが溶け合います。
初めて聴いたBMX Banditsが本盤でしたので思い入れもいちばんですね。凄く良く出来ていますし、とても大好きです。
シングル曲としてはおとなしめのM1「Come Clean」に続きまして、簡潔にして瑞々しいM3「Smile For Me」の場合、ひょうきんなベース・ラインはさておきまして実質的にはFrancis Macdonaldのソロ作品と言えるでしょう。
可愛らしいチャイムの音色も相俟って本盤中でいちばん好きです。
ドラマーにこんな素敵な楽曲を書かれてしまったら面目丸つぶれかと思いきや。
結局、次作アルバムの表題にもなったM6「Life Goes On」がこれまたギターポップの鑑のような1曲なのです。
ここでもストリングスにサックスにと八面六臂の活躍を魅せるJoe McAlinden本人にとっては御茶の子さいさいだとしても貴重な存在ですね。
そのJoe McAlindenがヴォーカルをとる「The Assumption As An Elevator」The Boy Hairdressersの再演、M5「Retitled」と来ましたら。
格調の高さも手伝って厳かな古典の領域ですよ、本当に。
どれもこれも珠玉のギターポップの連続、これでもかと畳み掛けて各曲とも個性が溢れ温もりさえ感じさせてくれますし格段に録音環境が改善されたことが一聴して判ります。
あのDaniel Johnston(やはり、相性が良さそうですよ)のM11「Do You Really Love Me?」のカヴァーも含めまして、その分やや平板な音の作りに不満が残りすけれどもね。
表題曲、M13「Star Wars」のサビでは“Don't make star wars Make love everybody tonight”なんて歌われていたりして、改めてこれこそBMX Banditsだなと。楽天的だとか暢気だとか言われればその通りなのですけれど、こういうことを正面切って演ってくれる人がいないと息苦しいですよね。
これからもBMX Banditsにはそういう存在でいて欲しいものですね。
今回ばかりは端正な側面が押し出されていますけれど、本質がパーティー・バンドですしそれはそれで良いのですから。
それにしてもですよ。
Douglas T. Stewartを中心に『Bandwagonesque』(1991)の発売前後のTeenage FanclubからNorman Blake、Superstarの結成を温めていたJoe McAlindenが揃い、そしてCaptain America結成以前の無職だったというEugene Kellyが拾われて歴代の顔ぶれの中でも最強だっただけにこの時期の来日公演を見逃していたのは痛恨の極みです。
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