
もう昨年のことになってしまうのですけれど、来日公演が実現との報せに少し心躍らされたものの
Douglas T. Stewart単独公演だったなんてこともあったようで。観に行くことは出来ませんでしたけれども盛況だったようで何よりです。
とりあえずはそれをダシに
BMX Banditsの栄えある1枚目のアルバム、『
C86』(1990)を取り上げてしまいます。実際には、またもや頼れる
Vinyl Japanが新装拡大増強盤として発売くれた『
C86 Plus』(1992)です。
これまた拡大増強版の『
CD86』(2006)が発売されたのも記憶に新しい
NMEの企画モノ、“
C86”から漏れてしまった
BMX Banditsが当てつけのように付けたそのままタイトルの本盤ですけれど、悪趣味とも取られかねないジャケット・デザインも改められまして7曲の追加収録、そして陽気なマルチ・プレイヤーの
Joe McAlindenによるリミックスまで施されるというファンにとっては堪らない豪華特別仕様なのです、実は。
その髑髏ジャケットのオリジナル盤とは若干、曲順が違いますし何より聴き易い音に仕上がっているので、同時期の
Teenage Fanclubのデビュー・アルバム、『
A Catholic Education』(1990)に優るとも劣らない良質のギターポップとして完成しておりますよ。
実際、
Teenage Fanclubの
Norman Blakeと
Francis Macdonaldが
BMX Banditsの一員として参加している訳ですので納得の出来なのですけれどね。
肝心の内容の方は冒頭からして拍子抜けしてしまう似非ヒップホップ風味宅録作品のM1「
Disco Girl(i)」で始まります。
しかも、友人なのか知り合いなのかはたまた単なるファンが送りつけて来た演奏なのか、
Douglas T. Stewartでも誰でもないという謎の1曲。これぞ新装拡大増強豪華盤の醍醐味ですね。
以下、はっきり言って聴きどころ満載です。名曲の嵐です。
必殺のM3「
Top Shop Girl」やM6「
Disco Girl」やらM7「
Your Class」を散りばめ、M4「
Rimbaud And Me」、M11「
But Tonight」といったところでしっとりと聴かせます。
一方では、幼き日の
Douglas T. Stewartの無邪気な歌声が響くM5「
Yo Yo Song (1969)」で自身のルーツに遡り、ヴァイオリンの音色も凛々しいインストゥルメンタル曲のM9「
C86」でスコットランド人としてのルーツを確認するなどの念の入りようです。
締めはM13「
Heaven's Daughter」でしんみりと。完璧ですね。
果たして、ここから先も聴き逃せません。
追加収録曲として、未入手のままの12インチ・シングルでもある『
Figure 4』(1988)から嬉しいことにM14「
Stardate」とM15「
Figure 4」にM17「
C'Est le Vent, Betty」という3曲が。涙ものでしたよ、これは。
そして、何と言ってもM16「
Strawberry Sundae」の幻のスタジオ・ヴァージョン(ですよね?)という決定打、ですよ。
ちゃんと録っていたのですね、残っていたのですよ。
デビュー盤、『
Sad?/E102』(1986)でのライヴ・ヴァージョンは稀に見るズタボロな演奏でしたからね、これこそ涙ものです。
と思いきや、お楽しみはこれからなのです。
M18「
Thinkin' About You Baby」という必殺のカヴァーが登場!もともとは
Springですけれど、「
Darlin'」の方が通りが良いですよね。そこは
The Beach Boysのマニアである
Douglas T. Stewartの眼力がモノを言っております。
何とも言いようのない人懐かしい、思わず頬擦りでもしたくなるような優しい感触の1曲です。
最後の最後はこれまた嬉しいM20「
Your Class (Live)」ですよ。
実際のステージの模様を余すところなく捉えた、その場の温度と観客の笑顔までが伝わって来るようなライヴ・ヴァージョンです。
いつものように、
Joe McAlindenのベース・ギターと会場全員の手拍子で
Douglas T. Stewartが飄々と歌い上げております。微笑ましいですね、最高ですね。