What Do You Want A Japanese To Do? (1992)

れっきとしたイギリスのレーベル、Vinyl Japanから発売されたいちばん最初のサンプラー盤がこの『What Do You Want A Japanese To Do?』(1992)です。
サイコビリーやら残り火のようなパンクから周回遅れのMadchester組をも取り込みつつ、基本はやはりギターポップというところに落ち着くという当時のレーベルの特徴が如実に浮き上がる絶好の編集盤となっております。
冒頭のThe Revsからして往年のThe Jamのような若気の至りまっしぐらでVinyl Japanの気概が感じられますよ。
根元にはやはりパンク魂が
Saturn VのM3「She's Gone」のもつれるような拙いリズムをも含めてその緩さ加減が絶妙ですね。
1990年代初頭の音ということで、世間体を気にしつつRazorcutsからの流れで行き着いた道筋が判ろうというものです。
Gregory Websterは相変わらず良いメロディーを持っていますよ。
Vinyl Japanが再結成を促して伝説のギターバンドを担ぎ出してしまいました。
そうです、あのThe Monochrome Setなのです。
ここで初めて彼らを知ったクチではないのですかれど衝撃的ではありました。
胡散臭い無国籍情緒は薄まってしまっていますけれど、なくても良い貫禄を感じさせてくれます。
それにしてもこのM4「House Of God」がMadonnaのとある楽曲に似ているとのことですけれど、「Material Girl」ですねこれは。
M5「Pistols Of Colour」のTokyo Skunxについて。
パンクを下地にロカビリー、カントリーなどを捩じ込んだ希有なグループです。
決して際物ということでもないのですし面白い音ですけれども即効性がある分、繰り返して聴くのには少し厳しいものがあるかと。
奇跡の国内盤CDデビューも果たしているのですけれど、実際にアルバム1枚分が限度であったりします。
当ブログでもちまちまと取り上げていますFat Tulips。
2分にも満たない暴発ポップ、M6「Dead Head Baby」がかっ飛んでいます。
ハウリングも異様に目立つほど粗い仕上がりなのですけれど、勢いで無理矢理に押し切っていますよ。
M7「Back Again」はブリティッシュ・ロックの良心と是非、呼んであげたいGrapeの楽曲です。
以前、コチラで取り上げました『Maths & Passion E.P.』(1992) からの1曲ですね。
まさしく端正で気品さえ漂って来ます。
続くStrawberry StoryはTalulah Goshの焼き直しそのままだと言っていまうには惜しいグループです。
メジャー契約を済ませたという報せから10年以上経ってしまったでしょうか、何の音沙汰もないことの方が惜しいです。
ここまでの3曲の流れは自分の中でもいちばんしっくり来る部分です。
当時、追い掛けては聴き漁っていた音そのものでしたので。
本盤の前半を締めるのがこれまたVinyl Japanのお陰で浮上して来たような感もなきにしもあらずのBMX Banditsです。
この頃には史上最高の布陣で何度も来日公演を行っていましたね。
『Star Wars』(1991)からのシングル曲が収録されていますけれど、この後さっさとCreation Recordsへと移って行ったのでした。
後半戦の幕開けを飾るのはあのThee Headcoatsの前身グループ、Thee MIlkshakesです。
生々しいうるさいガレージ・サウンドは丸っきり1960年代そのままですよ。
Billy Childishの演ることは永遠に変わりそうにないですね。
お次はThee Headcoateesです。
とは言ってもThee Headcoatsが楽器を演奏しない恋人たちを全面的にバックアップしている訳ですけれど。
ここでは東洋的な旋律を挟みつつお茶目なM13「My Boyfriend's Learning Karate」を披露しております。
ここから2曲は最近、復活を果たしたThe Hit Parade絡みとなります。聴きどころですね。
当ブログでもお馴染み、みんな大好きHeavenlyのAmelia FletcherがThe Hit Paradeに出張した魅惑のクリスマス・ソング、M14「Christmas Tears」。
The Hit Paradeの2枚目のアルバム、『More Pop Songs』(1991)のアナログ盤にはおまけの7インチ・シングルに収録されていましたね。
『More Pop Songs』収録版は珍しくパンクな演奏でクリスマス色がとても薄いのですけれど、こちらはまさに夢心地ヴァージョン。
肝心のAmelia姫の歌が抑え気味なのはともかく、それはもう麗しいポップ・ソングに仕上がっていますよ。思わず嬉し恥ずかしホワイト・クリスマスを連想してしまいます。(ポッ)
続くThe Hit Paradeの初期の定番曲、M15「My Favourite Girl」。
この時期は宅録であったらしいのですけれど、そんなことは言われなければ判らないくらいにきっちりしっかりと作り込まれています。
胸の空くような煌めくポップ・ソングにきりきり舞いなのです。
件のTalulah Goshから派生したThe CarouselはHeavenlyとも姉妹のような存在です。おまけ
信仰心の深さが前面に押し出されていたりして所謂、クリスチャン・フォークなのでしょうか。
ここでは重苦しいM16「Locks And Bolts」が選ばれています。
これまでの12インチ・シングルなどを纏めた編集盤、『I Forgot To Remember To Forgot』(1993)にしてもVinyl Japanであるからこそ実現可能となった1枚に違いありません。
もうひとつの日本のグループとしてSpeedway Starsが選ばれています。
そのM17「Special To Me」はどこかのライヴ録音とのことです。
ライヴと言えば。いつだか誰かのライヴを観に渋谷に向かう電車内でギター・ケースを抱える兄ちゃんを見掛けまして。
観に行ったライヴの前座がこのSpeedway Starsでヴォーカル/ギターがその人だったということもありましたね。
勿論、綺麗な女性を連れていました。
寡聞にして知らずにいたこれまた伝説のグループ、The Looking Glassの伝説のナンバーがM19「Mirror Man」です。
プラスティックの欠片のようにキラキラと輝くギターポップが胸ぐらを掴んで離してくれません。
The Haywainsによる憂いを堪えたM20「Rosanna」には心底、胸を締め付けられてしまいますね。
密かに応援している弱小インディー・ギターバンドです。とっくのとうに解散済みのところをしつこく愛でております。
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