Galaxie 500 / Today (1988)

Galaxie 500。大好きなグループです。
1990年前後に活躍したギターバンドの中でも特に好きな連中です。
アルバムで言えば3枚きり、ベスト盤を除けばあとはレア・トラック集やらライヴ盤、BBC音源集を1枚ずつ遺しただけなので振り返り易いということもありますしね。
今回、紙ジャケットCD化記念として改めて1枚目のアルバムに当たるこの『Today』(1988)を聴いてみましたら目から鱗がぼろぼろと剥げ落ちて行きました。
いちばん最初に聴いた次作の『On Fire』(1989)の出来映えが良過ぎることもありまして、いつしか本盤のことを何とはなしに軽んじてしまっていたようです。
完成度といった点ではやはりその『On Fire』に及ばないとしても、最初からGalaxie 500たる音世界が打ち出されていたということが如実に感じられます。
実に生々しいバンド演奏が捉えられているのです。
何と言いましてもDean Warehamが奏でるギターの音色が魅力的ですね、とても。
サイケデリックな煌めきを醸し出しつつ、そこには抗えない何か熱いものがあります。
緩みに緩んだ彼の歌と同時に揺らめくこの蒼白い炎のようなギターの音色はしかし、足元のおぼつかない不安定なバンド演奏と相俟って聴き手の心を、魂を揺さぶってくれます。
そうです、演奏自体は稚拙で酷いものなのかも知れません。ましてやDean Warehamの歌声と来ましたら、腹を立ててちゃぶ台を引っくり返してしまう人が続出でしょう。
それでも、今なお根強い人気の秘密のひとつとして挙げることが出来るのが音作りにおける全面的な後ろ盾を買って出たKramerの存在ですね。
変態レーベルの名を欲しいままにするShimmy Disc Records(廃業のため現在はSecond Shimmy Disc Records)主宰にしてUSオルタナティヴの裏番長、Kramerとの出逢いがなければ彼らにしても学生バンドの延長でその先もたかが知れていたのかも知れません。
何しろ、初めてGalaxie 500の演奏を目の当たりにした彼は頭のおかしな連中だと思ったとか思わなかったとか。確かにデビュー・シングルのA面曲に当たるM9「Tugboat」を聴いていますと納得することが出来るような。
人生、どう転がるか判らないものですね。
そんな訳でいち度でもその深みに嵌ってしまうと厄介なことになること請け合いのGalaxie 500。
こんな素敵な音楽を敢えてお薦めすることはありません。怪我して帰っていただくことにもなりかねませんので。