越天楽ゴーゴー (1996)

本作は特別仕様の●幻の名盤カルトGS●キューティーポップ●ソフトロック・ドライヴィン解放歌集*BMGビクター編という『越天楽ゴーゴー』(1996)です。
“すべての音盤はすべからくターンテーブル上(CDプレーヤー内)で平等に再生表現される権利を有する”
この宣言通り、この世の果てに打ち捨てられた特異な歌謡曲の亡骸を掬い取るべく活動に勤しむ幻の名盤解放同盟。
寄せ上げた胸の谷間よりも業が深い歌謡曲の一大絵巻として彼らが丹精込めてまとめ上げた編集盤シリーズを取り上げることもいよいよ最後となりました。
旧ブログから足掛け2年、毎月1枚ずつの割合で取り上げて来たのですけれども正直申し上げまして、これでようやく肩の荷が下りるといった塩梅です。
実際には野坂昭如の『マリリン・モンロー・ノー・リターン』(1999)や『実況録音盤歌いまくる大映スター』(2007)、緑川アコによる『酔いどれ女の流れ歌』(2007)に渥美マリの『ハワイで逢いましょう』(2006)など傍系をも含めてまだまだシリーズ作品は残っているのですけれども、勝手ながらここでひと区切りです。
東芝EMI編『男と女の炭坑節』(1994)の場合、ついぞ入手の叶わなかった1枚です。さすがにボックスには手を出せませんでしたし。
それはそうと本盤『越天楽ゴーゴー』については、のっけからカルトGSの8曲をはじめ、『キューティーポップコレクション』と『ソフトロック・ドラヴィン』まで無理矢理に詰め込まれた幕の内弁当という極めて変則的な内容でしょう。
聴きどころ満載も当然のこと、とにかく隙がありません。
当ブログで最後に取り上げる幻の名盤解放歌集に相応しい、充実した賑やかな内容でもあります。
そんな幕開けを飾るのがM1「越天楽ゴーゴー」(1965)です。
この雅楽をエレキ化した珍曲はスパイダースにとって2枚目のシングルのA面曲です。
当然のことながらインストゥルメンタル曲でして、これはもう筋金入りの異国情緒を発揮しておりますよ。
テケテケ・ギターを苦手としつつもM2「ダイナマイト」でどうにかして自分たちのものにしようとする心意気がM1「越天楽ゴーゴー」と同様に見え隠れしています。
BMGビクター編『資本論のブルース』(1993)にも収録済みのザ・リードがカヴァーするのがM3「ロック・アラウンド・ザ・クロック」とM4「太陽はもう輝かない」です。
それぞれ手堅くきれいにまとめられているがゆえに食い足りなさがありますね、確かに。
ひと息つきまして、ブラス・ロックなGSというM6「はるかな旅路」、ひとりGSのM7「イン・マイ・ワールド」がこれまた絶好調です。
同じくBMGビクター編『資本論のブルース』に収録されたシルク・ロードによる控え目ながらもグルーヴィーな演奏、沢村和子とピーターパンによる瞬発力の効いた歌と演奏に胸の焦がされる思いです。
ここで『キューティポップコレクション』からの唯一の、M9「恋のタッチ・アンド・ゴー」の登場です。
渦巻くオルガンも特徴的ですけれど、後のしばたはつみのはちきれんばかりの溌剌とした歌唱にはどうやっても参ってしまいますよ。
お次は『ソフトロック・ドライヴィン』からの出張曲、M10「限りなくあたえるもの」とM11「サークル・オブ・ブルー」です。
フィ・フィ・ザ・フリーもピコとアーチー・フレンズもどちらも大変に洗練されていまして、再評価も著しいピコの実力の片鱗を窺い知ることが出来ますね。
さて、ここからが本編の幻の名盤解放歌集となります。
まさに異形の歌謡曲としか言いようのないM12「たにしどの」がこれまた妙にアシッドの薫りがたなびく危険な1曲なのです。
じんぐらもんぐらと蠢くたにしが今にも耳の中にまで入って来そうです。
大ベテラン、内山田洋とクールファイブをここで聴くことが出来るとは思わなかったのですけれど、このM13「愛の旅路を」についてはすでにコチラで取り上げていました。
ここでも“夜のワーグナー”、藤本卓也が絡んでおります。最後まで幻の名盤解放歌集とは切っても切れぬ縁なのですね。
M16「俺は花の演歌歌手」と来ましたら、これぞ幻の名盤解放歌集といった1曲ですよ。
“演歌歌手”と書いて“どさまわり”と読ませるのです。涙で前が見えません。
最後が案の定、ありきたりな夢オチというのが何ともですね。
作詞を安井かずみ、作曲をかまやつひろしが手掛けたM17「ダンケシェン・ブンダバー」ではやけに体温の低い歌い回しが特徴の立川マリがやはり冷め切ったR&Bを好演しております。
その割にはハイ・ポジションで動き回るベース・ラインと高らかに鳴り響くホーンがひと際目立ちます。
本盤でいちばん輝いている1曲でもありますね。
トリを飾るのはM19「そっと信じて」
幻の名盤解放歌集の名物歌手、マリア四郎にどこか通じるものがある歌い手ですね。
怪しくて妖しくて情けなくて泣けて来るような何が何だか訳の判らない締めくくりですよ。
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