
本作は
幻の名盤解放歌集*トリオ編に当たる『
愛のイエスタデイ』です。
ジャケット・デザインからもお判りのように、1999年末に亡くなった
Curtis Mayfieldへの追悼の意が込められた1枚でもあります。
もともとは
幻の名盤解放箱(1999)のみに収録されていたのですけれど、とても購入する気にはなれなかったところに発売されたので渡りに船でした。
“すべての音盤はすべからくターンテーブル上(CDプレーヤー内)で平等に再生表現される権利を有する”この宣言通り、この世の果てに打ち捨てられた特異な歌謡曲の亡骸を掬い取るべく活動に勤しむ
幻の名盤解放同盟。
高層ビル街の谷間などよりもずっと業が深い歌謡曲の一大絵巻として彼らが丹精込めてまとめ上げた編集盤シリーズを採り上げて行きます。
仄暗く始まる表題曲のM1「
愛のイエスタデイ」とそのA面曲であるM2「
花嫁の手紙」がお馴染みの
藤本卓也による詞曲は勿論、編曲まで手掛けているなどというのは言われてみないとまったく判らないものです。
故
二子山親方が歌うのがM7「
貴ノ花男の花道」です。何だか相撲道に通じる少々、哲学的な内容だったりしますよ。
同じ
幻の名盤解放歌集『
うち家族は女の天下』(1996)に収録の「
3番ゲートで待ってるよ」に続くシングル曲だそうです。
月並みでしょうけれども、玉石混交の本シリーズの本盤にあっていちばん素直に耳に届いてくれるのが
ホットピンクによる2曲です。
特にM10「
愛のメモリー」では、甘ったるい歌声でしっとりとしたメロディーを歌うはその歌詞の内容は甘酸っぱいはでなす術なくいちころなのです。
また、同じくM10「
愛のメモリー」については「
Baby, I'm-A Want You」
Breadが織り込まれているということが言及されていますので益々、興味深いところです。
続くファンキー3連発も聞き物ですよ。
まずはM11「
醜女狩り」でして、醜女と書いて“しこめ”と読むなんてことを初めて知りましたし、悲哀が入り混じる歌詞の内容もともかく粘りのあるベース吠えるトランペットが特徴です。
そして、本作の目玉と呼べるのがM12「
恋はウムウム」です。
Major Lanceが1964年にヒットさせた
Curtis Mayfield作、「
Um, Um, Um, Um, Um,Um」のディスコ版といったところです。歌詞の内容に反して明るく元気な音に胸躍りますよ。
1999年当時、
Curtis Mayfieldが亡くなったという報せをとある店頭の手書きPOPで目の当たりにしたことを憶えています。
相方が居合わせていたのですけれど、独りにして欲しいくらいに落ち込んでしまいました。すぐにでも帰って『
Curtis』(1970)でも何でも聴いていたいと本気で考えたものでした。
M13「
六本木小唄」の場合は実際にはその出だしだけが小唄にはまったくそぐわないほど異様にファンキーという倒錯した1曲です。
M21「
がんばれジャイアンツ!!」がこれまた謎多き1曲なのです。サビで
“がんばれ がんばれ ジャイアンツ”と連呼するものの
読売ジャイアンツとはおよそ関係のない内容なのです。これが本当に商業ベースに乗った代物であったことが甚だ疑問ですね。
この訳のまったく判らない支離滅裂なM21「
がんばれジャイアンツ!!」の直後、いちばん最後に何も表記のないリプライズが置かれていまして。
M1「
愛のイエスタディ」の台詞、
“今も白い愛の記憶が 私の幻の中で見えてくる 始めは終わりであり 全ての始まりは、終わりの景色なの”という部分が抜粋されています。
最後の最後に背筋を凍らせるような
幻の名盤解放同盟による演出が実にありがた迷惑であるのも勿論、ここだけの話です。
関取による歌や映画『
トラック野郎』の挿入歌が複数含まれていることなどから、従来の
幻の名盤解放歌集と比較しますとネタ切れとは言わないまでも薄味なのかという印象です。
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