Howlin' Wolf / The Howlin' Wolf Album (1969)

Chess Records創立60周年記念の一環として紙ジャケットCD化されましたHowlin' Wolfの『The Howlin' Wolf Album』(1969)を聴いてみました。
世界初CD化でもあります。
時節柄、サイケデリック・ロックの潮流に思い切りおもねりつつ自らの代表曲を再演してみせる怪盤、珍盤、奇盤の類いと言える無理矢理な1枚です。
ジャケット・デザインにすら気力を微塵も感じられず、ご丁寧にも“This is Howlin' Wolf' s new album. He didn't like It. He didn't like his electric guitar at first either.”などと目一杯に記される始末なのです。
M3「Smokestack Lightning」などはHowlin' Wolfのダミ声はそのままに、宇宙遊泳でも想起させるようなギターのひしゃげた音色やフルートの音色が飛び交うという異形のサイケデリック・ブルースの最たるものです。
続くM4「Moanin' At Midnight」の場合には、ブルースの枠組みを超えたHowlin' Wolfというひとりの歌い手の姿が浮かび上がるという寸法に逆に面食らう部分が少なからずありますね。
濃密な時間を過ごすことが出来るのは確かなのですけれど、奇を衒ってこのようなアルバム作品に手を出す前に『Moanin' In The Moonlight』(1959)や『Real Folk Blues』(1966)をじっくりと聴き込む必要があると痛感したのは言うまでもございません。