My Bloody Valentine / Ecstasy And Wine (1989)

昨年、突然の再結成ライヴの発表がなされたMy Bloody Valentine。
今回の『Ecstasy And Wine』(1989)を手に入れたのは海賊盤を除けば最後に当たります。
Lazy Recordsに録音した12インチ盤の『Strawberry Wine』(1987)とミニ・アルバムの『Ecstasy』(1987)を併せた編集盤です。
もはや非常に入手困難である訳ですので大変にありがたい1枚です。
そのLazy Recordsには『Sunny Sundae Smile』(1987)というシングル盤もありますけれど、グループの名付け親だというヴォーカリストが抜けた後、浮世離れした絶好の女性ヴォーカリストを引き込んでからの音源です。
収録曲はいずれも1950年代の夢見るようなティーンエイジ・ポップを素材に『Psychocandy』The Jesus And Mary Chainからまともに影響を受けながらも耳障りになる一歩手前のノイズ・ギターを万遍なくまぶしつつ、さらにはThe Byrdsというよりも初期Primal Screamそのままのテロンテロンのアルペジオを絡めた必殺の方程式が炸裂しております。
以前からの特長だった甘ったるい極上のメロディーをBilinda ButcherとKevin Shieldsが力まず緩く歌うことで、後のCreation Records時代よりもポップソングとしては段違いの完成度を既に誇っているのですよ。
例えばM1「Strawberry Wine」やM7「(You're)Safe in Your Sleep(from This Girl)」なんてのは、甘美な白昼夢などというきれいごとよりも完熟を通り越して腹を下してしまいそうな、そんな危険な香りが充満しています。鬼甘です。
この段階において極めてしまったからこそ、次作の『Isn't Anything』(1989)がある種の実験的な側面を備えているのではないかと勘ぐってしまいます。
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