
本作は
幻の名盤解放同盟が主に
辰兄いこと
梅宮辰夫に焦点を絞ったアルバム、
幻の名盤解放歌集*テイチク編の『
ダイナマイト・ロック』(1995)です。
“すべての音盤はすべからくターンテーブル上(CDプレーヤー内)で平等に再生表現される権利を有する”この宣言通り、この世の果てに打ち捨てられた特異な歌謡曲の亡骸を掬い取るべく活動に勤しむ
幻の名盤解放同盟。
忘年会での深酒などよりもよっぽど業が深い歌謡曲の一大絵巻として彼らが丹精込めてまとめ上げた編集盤シリーズを採り上げて行きます。
かつて
幻の名盤解放歌集*テイチク編『
シューベルト物語』(1993)にも収録されたM1「
ダイナマイト・ロック」では、“
赤いマフラー 千切れるほどに 単車とばせば スカッとするぜ”と暴走行為並に疾走するブラス・ロック(←推測です)が炸裂しております。
続きまして“
夜のワーグナー”こと
藤本卓也お得意のクィーカが妖しく鳴くM2「
シンボル・ロック」から1番の歌詞を引用してみましょう。
人間だれでも一つぐらいは
何にか取柄があるもんだ
シンボル シンボル 男のシンボル
こいつを使ってこいつで泣かせて
その上こいつが金を生む
まったく シンボルちゃん様々だぜ曲調はまったくロックではないにもかかわらず、頂点を極めるようにロックな内容なのです。
以下、俳優の余技とも言えなくもない楽曲と一般的に抱かれている
辰兄い像に当てはまるような楽曲が混在しつつ、 M13「
デカンショ・ロック」の豪放さや小回りの効くM14「
ウッシッシ節」が目を惹きますね。
ここで
古谷充とザ・フレッシュメンがM15「
暗い夜(ファンキーNo.9)」とM16「
テスト・パターン」で以て一気に場面転換を図ります。
流行りの和ジャズと呼んでも差し支えない2曲なのですけれど、負の作用が思い切り働きまして
辰兄いの『
不良番長』シリーズな雰囲気(ん?)を一気に反転させてしまいます。
さらに輪をかけるように、M17「
古いギター」がこれまた聴く者を暗黒面に貶めるかのように鳴り響きますよ。
一転、M18「
ブルース通りのならず者」という表題にもかかわらずに若干の爽やかさを振りまくのが
太田浩明、その人です。と言いましても何も存じ上げませんけれども。
サビの一部に“
あ~ 雨が降ってきた~”とありまして、
昨日の悲劇を思い起こさせてくれますね。
最後のM20「
ヤスジのオラオラ節」と来ましたら、ギター・リフとリズムが「
Immigrant Song」
Led Zeppelinそのものという衝撃的な1曲なのです。
そのうえ、骨の髄まで漂白された
谷岡ヤスジの歌声で“
ヒルに近いアサーッ”と始まる訳ですよ。
“
ジャルキナイモンネッ(やる気ないもんね)”に否応なしに納得するほかないのです。
現在では『
愛しのキャラうた伝説』(2005)という編集盤CDにて聴くことが出来ますよ。
さすがにテイチク音源ですね。
幻の名盤解放歌集*テイチク編『
シューベルト物語』から派生した本盤においてもその濃密さが損なわれることなく独特の世界が構築されています。
続きを読む