うちの家族は女の天下 (1996)

本作は幻の名盤解放歌集*ビクター編に当たる『うちの家族は女の天下』です。
“すべての音盤はすべからくターンテーブル上(CDプレーヤー内)で平等に再生表現される権利を有する”
この宣言通り、この世の果てに打ち捨てられた特異な歌謡曲の亡骸を掬い取るべく活動に勤しむ幻の名盤解放同盟。
裏金捻出の仕組みなどよりも業が深い歌謡曲の一大絵巻として彼らが丹精込めてまとめ上げた編集盤シリーズを採り上げて行きます。
最初のM1「うちの家族は女の天下」と言いますと、サビの部分が『サザエさん』(日曜版のED)に紛れもなくそっくりな恐妻ソングです。
同じくホーム・クッキーズによるM2「あの子のせいなの」では、ジャケット写真真ん中の少女が稚い声で切ない乙女心慢心を歌う無責任ソングです。
続きましては7曲も収録されているケン・サンダースのバリトンが轟き、いかがわしさたっぷりの語りが聞き手を煽るM3「渚のメロディ」と殺し文句の“君を離さない”が炸裂しまくるM4「ネバー・ネバー」を是非ともお聴きください。
男の私、chitlinですら頭がクラクラしそうな塩梅ですので世の女性が目の当たりにするとしましたら必ずや身体に変調を来すに違いない何と罪作りな1曲でしょう。
極めて粘着質が高いM5「ワン・ナイト・ワン・キッス」でねっとりと迫るケン・サンダース。これでM8「悲しき願い」を歌われてはとても敵いません。
音程が外れてしまおうが燦々と黒光りするケン・サンダースの存在自体が迷惑防止条例に触れてしまうのではないかと肝を冷やす思いです。
後半に入りまして文字通りパンチの利いたホットロッド、M12「パンチ野郎」にホットロッド式数え歌のM13「スピード野郎」といった具合に波に乗りまして。
ペットの死を悲しむうら寂しいムードコーラス、M14「可哀相なチロ」に続くのがM15「甘えに行くぜ」に何たる表題かと思いきや、囁き唱法で以て何とか流れを堅持しております。
それにしても相撲取りってのは良い喉を持っていますね、ということが判るM14「3番ゲートで待ってるよ」は名大関であった先代の貴ノ花によるB面曲です。
どう見ても食い合わせの悪そうなパロディー、M15「たそがれ海峡(白鳥の湖)」にて大御所の殿さまキングスが見事な荒技で締め括ります。
こちらは先日、CD化されました『殿キン・カンタービレ~パロッタ・クラシック』(2007)の冒頭に収録されていますね。これも是非、購入しておきたい1枚です。
こうして聴き通していますと、頭のホーム・クッキーズの2曲が忘却の彼方に飛ばされてしまっていることに気付かされましてもう1丁、という塩梅です。
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