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My Bloody Valentine / Feed Me With Your Kiss (1988)

feedmewithyourkiss

My Bloody ValentineにとりましてCreation Recordsからの初アルバム、『Isn't Anything』(1988)と時を同じくして発売されたのが今回の『Feed Me With Your Kiss』(1988)です。
これもまた実際には無題なのでけれど。


You Made Me Realise』(1988)の桁外れの衝撃度に対して後塵を拝しているような印象を抱いていたのですけれど、なかなかどうしてこの表題曲、M1「Feed Me With Your Kiss」にもその凄みが段違いなのです。


けたたましく渦巻く轟音ギターのリフで以て容赦なく聴き手を捻じ伏せて行く一方で、倦怠感が漲るくぐもった歌声が右から左へと無為に通り過ぎます。
尋常ではない緊張感を発しながらも疾走感たっぷりで、刺激的このうえない仕上がりです。


M2「I Believe」には心底、参ってしまいます。
吹きすさぶ不協和音に唸る重低音、そして不安を煽るかのように甲高い鍵盤の音色。
その一方でBilinda Butcherが耳元に息を吹きかけるような吐息コーラスが挟まれるのですから、悶絶必至です。
明かりを落として聴取でもしてしまったらば身体がこわばりそうです。


M3「Emptiness Inside」はと言いますとまさに戦慄の一撃なのです。
どういう音作りなのでしょうか、血しぶきでも飛んで来そうなくらいの勢いで刻まれるギターと執拗に打ち鳴らされるドラムス。
言葉を失ってしまいます。


オーラという体の良いものではなく、鬼火でも纏っているのではないかと次のM3「Emptiness Inside」を聴いていますと恐ろしくなって来ます。


Isn't Anything』を通り越して、どことなく『Tremolo E.P.』(1991)収録の「Moon Song」に通じる傾向を持つM4「I Need To Trust」は無国籍感覚すら醸し出しております。


Isn't Anything』から外された結果としてのM1「Feed Me With Your Kiss」以外の3曲なのですけれど、逆にこのEPの路線でアルバム制作したとしてもそれはそれでもうひとつの『Isn't Anything』を期待することが出来そうな、そんな確固とした音世界でもあることと言えそうです。


収録曲の音質がこれまたどれもが残忍極まりない有り様であることに言及しておきましょう。生々しさを超えた熾烈な音像に翻弄されるほかありません。
ただし、そのようなちんけなことなどをぶっとばす迫力に勝るのがMy Bloody Valentineでもあるのです。



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My Bloody Valentine / You Made Me Realise (1988)

youmademerealise

今回ご紹介するのは今夏、やおら再始動を計るMy Bloody Valentineの『You Made Me Realise』(1988)です。実際には無題なのですけれども。


Creation Records移籍第1弾にして5曲入りの12インチ盤でもあり、ほんの数年前にべらぼうに高価な中古盤を思い切って購入した憶えがあります。


Lazy Records時代におきまして、既にメロディー志向を極めてしまった彼らが向かったその先のある種実験的な『Isn't Anything』(1988)に至るまでの大いなる半歩といったところでしょうか。


M1「You Made Me Realise」こそMy Bloody Valentineの代名詞と呼ぶに相応しい1曲なのです。
大鉈を振るうように豪快に切り刻まれて行く轟音ギターのモンスター・リフが衝撃的な傑作です。
Bilinda ButcherKevin Shieldsのふたりのハーモニー・ヴォーカルも脱力しながら交差し、重なり、溶け合い・・・。


ライヴではいちばん最後に演奏され、それを唯一の来日公演でも体験することが出来ました。
ブレイク部分で延々と放出されるとてつもない轟音によって全身の毛穴をこじ開けられました。
もはやダイヴを敢行する者すらおりませんでした。


その際、茫然自失の観客に向けてステージ奥から強く照らし出した光にステージ上は包まれ、我々はそこに神を見た、ような気がいたしました。


持って行かれました。
放り出されました。
ぶっとばされました。


退廃的な雰囲気に溢れるM2「Slow」について、聴き手を蹂躙するかのようなゆったりとした曲調がその危うさを増長させています。


苦み走ったギターの音色と甘酸っぱいメロディーとが掛け合わさってポップに転んだM3「Thorn」と同様にM5「Drive It All Over」にしても甘いメロディーがギターの濁り切った音質と相俟って荒涼としつつ、どこを切ってもポップであり続けるところは『Ecstasy And Wine』(1989)を確実に超えてしまっています。


最後のM4「Cigarette In Your Bed」はと言いますと、何となく異国情緒がある一方でどこか『Isn't Anything』にも通じる怪しい作風が特徴です。


音の感触に統一感はあるものの、それぞれの収録曲は意外なほど多様性に富んだ曲調でして、しかもどれもが官能的であり歓喜のうめき声に聞こえて来るのですから、もう参ってしまいます。



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My Bloody Valentine / Ecstasy And Wine (1989)

ecstacyandwine

昨年、突然の再結成ライヴの発表がなされたMy Bloody Valentine
今回の『Ecstasy And Wine』(1989)を手に入れたのは海賊盤を除けば最後に当たります。


Lazy Recordsに録音した12インチ盤の『Strawberry Wine』(1987)とミニ・アルバムの『Ecstasy』(1987)を併せた編集盤です。
もはや非常に入手困難である訳ですので大変にありがたい1枚です。


そのLazy Recordsには『Sunny Sundae Smile』(1987)というシングル盤もありますけれど、グループの名付け親だというヴォーカリストが抜けた後、浮世離れした絶好の女性ヴォーカリストを引き込んでからの音源です。


収録曲はいずれも1950年代の夢見るようなティーンエイジ・ポップを素材に『PsychocandyThe Jesus And Mary Chainからまともに影響を受けながらも耳障りになる一歩手前のノイズ・ギターを万遍なくまぶしつつ、さらにはThe Byrdsというよりも初期Primal Screamそのままのテロンテロンのアルペジオを絡めた必殺の方程式が炸裂しております。


以前からの特長だった甘ったるい極上のメロディーをBilinda ButcherKevin Shieldsが力まず緩く歌うことで、後のCreation Records時代よりもポップソングとしては段違いの完成度を既に誇っているのですよ。


例えばM1「Strawberry Wine」やM7「(You're)Safe in Your Sleep(from This Girl)」なんてのは、甘美な白昼夢などというきれいごとよりも完熟を通り越して腹を下してしまいそうな、そんな危険な香りが充満しています。鬼甘です。


この段階において極めてしまったからこそ、次作の『Isn't Anything』(1989)がある種の実験的な側面を備えているのではないかと勘ぐってしまいます。


プロフィール

北沢オーストラリア

Author:北沢オーストラリア
ハンドルネームをchitlinから北沢オーストラリアへと改めました。どうか、よろしくお願いいたします。
ポップ・ソングのことを中心に書こうとして自家中毒を起こしているブログです。
見当違いのことばかりですけれども、どうかご容赦のほどを。

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